診療グループ

びまん性肺疾患・感染症グループ

業 績

びまん性肺疾患グループ

臨床

「びまん性肺疾患」とは胸部レントゲンや胸部CT画像において、病変が両側の肺に広範に広がった肺疾患を言います(図1)。その中で、主に肺の間質を炎症や線維化病変の場とする疾患を間質性肺疾患といい、特発性間質性肺炎、サルコイドーシスといった指定難病や、膠原病に伴う間質性肺炎、過敏性肺炎、そして抗がん剤などの薬剤による薬剤性肺炎などが含まれます。人口動態統計において、肺がん、肺炎に続き、間質性肺炎も全体の上位死因に含まれ、決して稀な病気ではなくなりました。画像所見のみでは確定診断に至ることは難しく、問診・血液検査や気管支鏡検査などを行い、適切な診断・治療を行うことが重要であり、当科のカンファレンスはもちろん、膠原病内科や皮膚科にも協力いただき適切な診断に取り組んでします。また、この疾患群には難治性疾患が多く、それぞれの疾患で十分な治療法があるとは言えません。間質性肺炎の中でとりわけ予後の悪い、特発性肺線維症や進行性線維化を伴う間質性肺炎に対しては、新規治療開発に積極的に携わって、少しでもよい治療法を患者さんに届けられるよう診療を行っています。

<図1>

様々なびまん性肺疾患

肺は呼吸を介して外界と通じており、細菌性肺炎、真菌感染症(アスペルギルスなど)、抗酸菌感染症(結核、非結核性抗酸菌症)、ウイルス感染症などの多彩な感染症が起こる臓器であります。血液検査・尿検査を利用した病原体診断や気管支鏡による検体採取を行ったのちに治療を導入しています。
最新のガイドラインや最新の治療薬に基づいた治療提供を行いつつ、年余にわたる治療が必要な疾患もあり、副作用の有無にも注意しつつ診療にあたっております。

臨床研究

福岡県下4大学とその関連病院、計29施設によるネットワークを形成し、特発性間質性肺炎、COPDの慢性呼吸器疾患 1000症例を集積して前向きコホート研究を行っています(Respir Investig. 2020; 58: 74-80)。5年間の観察期間を終え、フォローアップデータを現在投稿中です。本邦の特発性間質性肺炎患者の最新のReal-world dataを報告し、今後も発症機序に関わる遺伝的背景の解明など解析を続けていきます。
また、間質性肺炎の治療において、使用可能な治療薬が登場しましたが、適切な使用方法については十分に検証されているとは言えない状況です。より良い治療法開発を目指して多施設共同臨床試験を立案し、実施しております。この臨床試験の結果を日常診療に還元できるよう行っていきます。

試験名 研究代表医師・事務局
未治療Progressive pulmonary fibrosisを対象としたニンテダニブ・抗炎症治療同時導入療法の第Ⅱ相試験(TOP-ILD) 研究代表医師:岡本勇
研究事務局:坪内和哉

基礎研究

間質性肺炎については、これまでの研究で徐々に病態が分かりつつありますが(図2)、更なる病態解明、治療法の開発が必要です。当研究室では、原子・分子・細胞・動物モデルを扱う基礎研究から、主にヒトを対象とした臨床研究へとつながるトランスレーショナル研究を目指しています。細胞・動物モデルを用いて、肺高血圧症の進展に関する病態解明および新規治療法の探索、気道上皮細胞の分化や増殖、障害をうけた線維芽細胞の除去メカニズムといったテーマで、間質性肺炎の病態解明に取り組んでいます。また臨床検体を用いた研究としては、間質性肺炎患者さんの気管支肺胞洗浄液を、マスサイトメトリーという新しい方法を用いて解析して、間質性肺炎の発症や進展に関与する特異的細胞集団の同定に取り組んでいます(Front Immunol. 2023 Mar 6; 14: 1145814)。

<図2>

特発性肺繊維症の病理病態
事業名 役割 課題名
科学研究費助成事業
研究活動スタート支援
2022年度~2023年度
研究代表者
池亀聡
ワクチン感受性低下を来しうるSARS-CoV-2新規変異株の予測

呼吸器内科医を目指す先生方へ

間質性肺炎は多岐にわたり、病態もまだ十分分かっていないため、診断や治療もまだまだ発展途上です。逆に言えば、これからまさに発展していく領域(Blue Ocean)だと確信しています。びまん性肺疾患に興味をお持ちの先生は、是非一緒にやっていきましょう!あなたに出会えることを楽しみにしています!

感染症グループ

臨床

肺は呼吸を介して外界と通じており、細菌性肺炎、真菌感染症(アスペルギルスなど)、抗酸菌感染症(結核、非結核性抗酸菌症)、ウイルス感染症などの多彩な感染症が起こる臓器であります。血液検査・尿検査を利用した病原体診断や気管支鏡による検体採取を行ったのちに治療を導入しています。
最新のガイドラインや最新の治療薬に基づいた治療提供を行いつつ、年余にわたる治療が必要な疾患もあり、副作用の有無にも注意しつつ診療にあたっております。

基礎研究

感染症研究室では新型コロナウイルス感染症の研究に取り組んでいます。新型コロナウイルスのSpikeタンパク質(ワクチンに含まれる成分)を発現する組換えvesicular stomatitis virus(VSV)という系を利用して本物の新型コロナウイルスを利用することなく安全に新型コロナウイルスのSpikeタンパク質の評価ができる系を開発・報告しました。この研究では2021年当時に接種が進みつつあった新型コロナウイルスワクチンの変異株への有効性を検討し、特定の変異株では有効性が減弱することを明らかとしました(図3)。現在はこの系をさらに改変し、ウイルスの自立増殖能を完全に欠損させ、より病原性が高いウイルスの解析ができるよう研究中であります。

<図3>

ワクチンの効果の評価系の確立と変異株での中和抗体価での確認