診療グループ

喘息・COPDグループ

業 績

臨床

 気管支喘息は、気道の慢性炎症により気管支が狭くなる病気です。発作性の呼吸困難や喘鳴、胸苦しさ、咳が主な症状であり、感冒、冷気、天候や大気汚染などにより悪化することがあります。喘息は子供の病気と思われがちですが、患者全体をみると4人に3人は成人喘息であり、成人発症の最多年齢は40歳代です。また、喘息を含むアレルギー疾患は近年増加しています。吸入ステロイド薬をはじめとした治療の普及により、我が国の喘息による死亡者数は年間約1,000人程度にまで減少しました。しかし今なお、喘息患者さんの5~10%はしっかり治療しても十分なコントロールが得られず、重症喘息と報告されています。当科では重症喘息に対し、新規治療法である生物学的製剤(アレルギーを誘導する分子に対する抗体製剤)の投与を行っています(図1)。

<図1>

喘息の診断と治療

 慢性閉塞性肺疾患(COPD: chronic obstructive pulmonary disease)は、長期の喫煙等により中高年以降に発症する進行性の炎症性肺疾患です。慢性的な咳・痰や労作時の息切れが主な症状です。WHO統計(2019年)では世界の死亡原因の第3位でした。日本では500万人以上のCOPD患者が存在すると推定されていますが、この病気の認知度の低さや進行するまで気付かない場合が多いことから、大多数が未診断・未治療の状態です。進行すれば呼吸不全に至り命に関わるため、初期の段階で診断し、禁煙や吸入薬の開始につなげることが重要です。その他、気管支拡張症や治らない咳(慢性咳嗽)に対する新薬開発のための臨床試験(治験)をはじめ、治療手段が十分にない呼吸器疾患、呼吸器症状の診療に広く取り組んでいます。

臨床研究

 重症喘息に対して標的分子の異なる複数の生物学的製剤が使用可能となりました。喘息症状がほぼ消失する患者さんがいらっしゃる一方で、個々の患者さんに対してどの生物学的製剤が最も適しているかの選択はまだ難しい場合があります。そのため当科では、新規生物学的製剤の治療効果に関する医師主導特定臨床研究を実施しています。

試験名 研究代表医師・事務局
コントロール不良重症喘息患者を対象とするTezepelumabによるclinical remissionを検討する多施設共同前向き介入試験(TERESA) 研究代表医師:岡本勇
研究事務局:神尾敬子

 また、福岡県下計29施設によるネットワークで、特発性間質性肺炎、COPDの慢性呼吸器疾患1000症例超の前向きコホート研究を行い、5年間の観察期間を終え、1秒率70%以上であったCOPD臨床診断群がCOPD I~II期(軽症~中等症COPD)群よりも予後不良であることを明らかにしました。現在、COPDに対する吸入薬の長期効果を論文投稿中です(図2)。今後も新たな解析結果を報告していく予定です。

<図2>

肺の生活習慣病前向きコホート研究の成果(例)

基礎研究

 喘息およびCOPDの治療をより良くするには、基礎研究を通じて治療介入の糸口を見つけることが重要です。当研究室では喘息やCOPDの患者さんから気管支鏡下に採取した細胞を用いて、気道の恒常性維持のための粘液産生・分泌能や気道上皮バリア機能に関する研究を進めています。大学院生1名が九州大学生体防御医学研究所へ出向し、マウスモデルを用いて妊娠喘息が子の喘息発症につながるメカニズムの解明に取り組みました(図3)。また、遺伝子改変喘息モデルマウスを用いて、細胞同士の接着を担う分子の一種であるClaudin-3がアレルギー性気道炎症に関与していることを報告しました。現在も喘息・COPDの治療標的探索に関する研究を継続しています。

<図3>

喘息・COPD研究室の研究成果(例)

呼吸器内科医を目指す先生方へ

 気管支喘息やCOPDの治療には、まだまだ残された課題が山積しています。当研究室では喘息・COPDに関する基礎研究、臨床研究および疫学研究を行っており、難治性疾患の病態解明や新規治療法の確立に取り組んでいます。そのためには、やる気あふれる先生と議論することが不可欠です!臨床でも研究でも、少しでも呼吸器領域に興味のある先生はお気軽にお問い合わせください。

喘息・COPDグループ 2025年4月 医学部百年講堂前にて