感染症グループ
業 績臨床
肺は呼吸を介して外界と通じており、病原体が侵入しやすく感染症が起こりやすい臓器です。また、細菌、真菌(アスペルギルスなど)、抗酸菌(結核、非結核性抗酸菌症)、ウイルスなどの多彩な病原体が感染し得る臓器でもあります。血液検査・尿検査を利用した病原体診断や気管支鏡による検体採取を行ったのちに治療を検討します。最新のガイドラインや最新の治療薬に基づいた治療を提供することだけでなく、患者さんの全身状態やその他の病状などを考慮しつつ、副作用の有無にも注意しながら診療にあたっております。
臨床研究
日常臨床における微生物同定は、質量分析法によるマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF MS)の普及により迅速性と正確性が大きく向上しています。しかし、近縁種、cryptic species、新規菌種などでは、従来法やMALDI-TOF MSによる菌種同定が困難または不正確となることがあります。この問題は、一般細菌だけでなく、抗酸菌や真菌においても認められ、菌種名は単なる分類情報ではなく、病原性、薬剤感受性、治療方針などと密接に関係するため、臨床的に難渋する症例では正確な菌種同定が重要であると考えています。
4月から九州大学病院に赴任し、大学院時代に経験した菌株の全ゲノム解析の知識を活かして、珍しい菌株や治療に難渋した微生物感染症に対して、全ゲノム情報を用いた正確な菌種同定及び臨床経過の検討を行うことを計画しています。
基礎研究
大学院時代に市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の市中における集団感染疑い事例に対して、全ゲノム解析を行いました。全133株を解析し、全ゲノム情報を用いても478 SNPsしかない非常に近縁な株集団であったことと、市中に感染が拡がった7年間の間にプラスミドやIS256(挿入配列)といった可動性遺伝因子による多様なゲノム変化を起こしていたことを明らかにしました(図1)。
<図1>
- 新型コロナウイルスの網羅的変異導入系の確立
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感染症研究として上述した臨床研究で解析した全ゲノム情報をもとに、該当菌種に対して規模を拡大した解析を検討し、研究計画書を提出中です。
さらに2025年4月からは当科大学院生が九州大学ウイルス学教室(福原崇介教授)で研究活動を始めており、基礎の教室と連携しつつより挑戦的な研究に取り組んでいく体制を構築したいと考えております。
呼吸器内科医を目指す先生方へ
優れた抗菌薬開発により以前は死因の第1位であった肺炎の予後は劇的に改善しましたが、通常の抗菌薬が効かない特殊な病原微生物など、呼吸器感染症の診療は奥が深いです。その感染力の強さから新型コロナウイルス、インフルエンザをはじめとした呼吸器系の新興感染症が問題となっており、抗酸菌分野では、肺非結核性抗酸菌症の罹患率が肺結核を上回る状況となっているにもかかわらず、肺非結核性抗酸菌症ではいまだに「治癒率」ではなく「排菌陰性化」が治療指標として用いられています。
このような呼吸器感染症に関わるさまざまな課題をともに考え、解決策を模索してくださる先生方をお待ちしております。