留学について
留学記
柴原大典先生
- [所属]
- U.S.A.: Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Medical Oncology
- [専門分野]
- 肺癌
私は2020年8月から2023年3月までの2年8ヶ月、米国マサチューセッツ州のボストンにあるBeth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical Schoolに留学していました。学生の頃から留学したいという思いは心のどこかにありましたが、行動に移せず日々の診療を続けていました。しかし、医師14年目にしてラストチャンスと思い、不惑の40歳を目前にして、コロナ真っ只中に家族を連れて留学することを決意しました。
私が所属したラボの研究主宰者である小林進先生は、EGFR遺伝子変異陽性肺癌におけるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤への耐性を示すT790M変異を発見された先生で、アメリカの第一線で肺癌研究を続けております。前任者と入れ替わりという形でポスドクとして雇ってもらい、留学当初のメンバーはポスドクが私一人、修士の学生が一人でしたが、その後ポスドクが二人、学生が二人に増え、私は学生の指導を行いながら研究を進めました。同じフロアには複数のラボがあり、多くの実験機材を共有し、情報交換やランチタイムの雑談など交流も盛んでした。ヨーロッパやアジア、アメリカなど様々な出身の研究者たちとの交流は非常に貴重な経験となりました。幸運にも、私は2本の論文(筆頭著者1本、共同筆頭著者1本)を発表し、教科書の一部を執筆させてもらい、ニューオリンズで開催されたAACR(米国癌学会)で発表も行うことができ、研究面では非常に充実していました。
私生活では、ボストンはニューヨーク、サンフランシスコと並ぶ物価の高い三大都市の一つで、約3年間の留学生活は経済的に非常に厳しいものでしたが、家族にとってはかけがえのない経験となりました。最初はコロナ禍での渡米だったため、学校はハイブリッド授業(対面授業とオンライン授業)で大変でしたが、すぐに対面授業に戻り、子供たちは友達もできて楽しんでいました。また、ボストンは非常に治安が良く、特に病院や研究機関が集まるLongwood Medical AreaからBrooklineにかけては、夜に一人で歩いても全く問題ありませんでした。さらに、ボストンにはMLBのレッドソックスやNBAのセルティックスもあり、本場の野球やバスケットも体感できました。
そして何よりも、家族と過ごす時間を多く持てたことが留学して良かったことでした。毎朝子供たちと一緒に歩いて登校・通勤し、夜は一緒に食事をするという生活は、日本で臨床をしていたらできないものでした。また、休みにはナイアガラの滝、グランドキャニオン、フロリダのディズニーワールドなどアメリカ国内を旅行し、ニューヨークへは車で4時間ほどで行けるので、週末に遊びに行くこともありました。ボストンのロブスターやニューヨークのTボーンステーキは最高でした。久しぶりにサッカーも再開し、充実した私生活を送ることができました。
最後に、今回の留学を通じて、人と人との繋がりや縁が本当に重要だと実感しています。常に感謝の気持ちを忘れず、今度は私が若い先生たちのために全力でサポートしていきたいと思います。そして、少しでも肺癌治療の発展に貢献できるように、研究も臨床も頑張っていきたいと思います。