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留学について

留学記

池亀 聡先生

[所属]
U.S.A.: Ichan School of Medicine at Mount Sinai,
Department of Microbiology
[専門分野]
呼吸器内科学、呼吸器感染症

2017年5月から2021年3月の約4年の間、米国ニューヨークのIcahn school of medicine at Mount Sinaiという施設で研究留学をしておりましたので、私の留学体験を報告させていただきます。

まず場所ですが、米国ニューヨーク州の中心地であるマンハッタンの北東側(upper east side)に位置しております。セントラルパークの真横で、世界三大美術館であるメトロポリタン美術館の1kmほど北に位置しており、観光地の真横に住んでいるという感じでした。ただ、建物が頑丈かつ地震が非常に少ないためか築50-60年以上のレンガ造りの建物がほとんどで、道路や側道の幅も広く、東京のような大都会を想像していた私のイメージとは違ったものでした。

北海道とほぼ同緯度で気温も北海道並みと、九州の気候に慣れている私達には暗く寒い冬が待っておりますが、それ以外の季節は涼し目で比較的過ごしやすかったかなと記憶しております。観光地価格のため物価は非常に高くぜいたくはできませんでしたので、実験の待ち時間の合間を縫ってセントラルパークを散歩して気分転換をしつつ海外生活を楽しんでおりました。

研究施設はもともとは病院として100年ほど前に始まったものですが、徐々に規模を拡大し医学部や研究施設も併設するようになりました。その中でウイルスを研究する約20のラボが微生物学部門として集合しており、私はその中のDr. Benhur Leeというシンガポール出身のボスのラボに在籍し、呼吸器ウイルスの変異許容性をメインに研究を進めておりました。

呼吸器ウイルスの中には、インフルエンザのように変異を続けワクチン株の更新が必要なもの、麻疹等のように変異が比較的少なく50年前に開発されたワクチンが今でも有効なものに分かれます。このような変異が少ないウイルスが変異をどの程度許容できるかを、ウイルスに積極的に変異導入する技術を利用することで変異株の生存・淘汰を次世代シークエンサーで調べるというものでした。
また、留学途中に新型コロナウイルスが出現し米国で都市閉鎖を経験し、ウイルス学者として新型コロナの研究を開始し、新型コロナのワクチンを誰よりも早く打つという、当時はつらいことも多かったですが今となっては貴重な体験をすることもできました。

最後に、「留学ってなんでするの?」と考える先生もいるかと思います。今でも明確な答えを持ちませんが、「大学院に行った時から、海外で研究しなければならないと思ってしまっていた。」ということに尽きます。自分は九州大学ウイルス学教室で大学院時代を過ごし、周りには留学することが普通と考え実際に留学していった人たちばかりでした。当時の教授の柳先生にいたってはカナダと米国に合計2回も留学しております。新生活の大変さや、留学先で業績が出ないかもしれないという怖さも当然あるかと思いますが、一度きりの人生です。挑戦しなかったことを後悔するより挑戦してみて納得する方がいいのかなと思います。
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