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留学について

留学記

石井由美子先生

[所属]
CANADA: McGill University, Meakins-Christie Laboratories
[専門分野]
気管支喘息、COPD
昨年夏にカナダ・McGill大学へ留学し、早1年が過ぎました。私の所属する研究室主宰者James Martin先生は医学部長や病院長などをされたこともあるM.D.(呼吸器内科医)Ph.D.であり、現在も外来診療をされながら研究室を運営しておられます。Martin研究室はMcGill大学の研究施設McGill University Health Centre Research InstituteにあるMeakins-Christie Laboratory(MCL)に属する23の研究室の一つです。MCLは呼吸器疾患の基礎医学研究を行うべく1972年に設立され、特に肺生理研究に力を入れています。
そのためMCLのロゴは、世界で初めてスパイロメトリーを開発・発表したJohn Hutchinsonの論文(Lancet, 1846)から引用された「スパイロメトリーに息を吐く前の胸を膨らませる姿勢」です。MCLの主な対称疾患は気管支喘息、COPD、のう胞性線維症ですが、免疫分野も得意としており、様々な肺感染症、マイクロバイオームの研究も盛んです。研究室間の垣根が低くちょっと相談する、ちょっと機器を借りる、ちょっと技術を教えてもらうなどが簡単にでき、お互い助け合って研究を行っています。
私はマウスを用いた気管支喘息およびCOPDの研究を行っています。大学院は生化学教室に出向したので、初めてのマウス実験、初めての肺の実験で呼吸器科医として興味深く研究生活を送っています。使用しているマウス気道過敏性試験などの手法の多くは九大肺生理教室と同じであり、胸研で発展させられそうな研究で胸が膨らみます。私は臨床研究にも基礎実験要員として参加させていただいておりますが、研究のためだけに気管支喘息患者に気管支鏡検査を行うことや臨床研究患者のサンプルを他の基礎研究へ使用することなどが、短期間で承認・実行されヒトのデータが続々と集まっています。この臨床研究や橋渡し研究のしやすさ、スピード感には驚いています。倫理的問題もありますが、医学におけるヒトデータの重要性・有効性および現代科学のスピードを考えると、日本でもこのようにできればなと羨ましく思います。
私生活でもだいぶ楽しみ方がわかってきました。旅行に行ったり、公園でバーベキューをしたり、不思議な食材を試してみたり。モントリオールはフランス文化を色濃く受け継ぐケベック州の都市なので、クロワッサン、フランスパン、フランス料理、コーヒー、クリームブリュレとおいしいものがたくさんあります。またアジアや中東からの移民も多いので、中華料理、韓国料理、ベトナム料理、ペルシャ料理などバラエティーもあり、食生活には不満がありません。言語面では看板やメニューやアナウンスはフランス語ですし、お店でもまずはフランス語で話しかけられるので、ほんの少しですがフランス語がわかるようになりました。そして小学生になった長男はフランス語の授業や宿題があり、親も大変です。フランス語系保育園に通う2歳の次男は結構わかっているようですが…。ちなみに子供達の英会話能力はすでに私を超えており、さらさらっと英語の出てくる子供に色々と教えてもらっています。
モントリオールは春数日、初夏3ヶ月、秋2ヶ月、冬7ヶ月です(私個人の印象です)。短い夏に旅行やBBQ、テラスでのランチを楽しみ、冬は街中にある公園でスケート、ソリ、あるいはちょっと郊外でスキー、あるいは南の国でバカンスを楽しみます。とはいえ、長く寒く(毎日マイナス20度前後)暗い(16時には真っ暗)冬は楽しみが少なく、カナダ人も仕事しかすることがないと言っています。福岡出身の私には、雪の粒子が小さくきらきらしていること、雪がさらさらで固まらず雪だるまが作れないこと、積もった雪が風で飛んでいくこと、雪の上に氷が張ること、ソリは結構怖いことなど発見が多く、1回目の冬は楽しいものでした。2回目の冬の気配が近づき今度は少し憂鬱な今日この頃ですが、限られた留学期間ですので研究も遊びも満喫しようと思います。6月より成田-モントリオール直行便が就航し約12時間でモントリオールに着きます。お勧めはもちろん夏ですが、秋の紅葉や極寒の冬もぜひ遊びに来て下さい。
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