研修・入局案内

留学について

留学記

神尾敬子先生

[所属]
Hudson Institute of Medical Research, Centre for Innate Immunity and Infectious Diseases
[専門分野]
気管支喘息、COPD、気道ウイルス感染と免疫応答

2014年10月から研究留学のために子供3人とともにオーストラリア、メルボルンへ渡豪しました。夫(心臓外科医、オースティン病院に臨床留学)に合わせて年度途中の急な移動となりましたが、医局・職場の皆様には温かく送り出して頂きました。

メルボルン東部のMonash Medical Centreに隣接するHudson Institute of Medical Researchにてpostdoctoral fellowとして基礎研究に従事しています。研究室の上司であるPhilip Bardin教授はMonash Medical Centre呼吸器内科の臨床教授でもあります。研究室では気管支鏡下に採取したヒト気道上皮細胞を基礎研究に使用しており、その技術の習得が留学の目的の一つです。そうお伝えすると、Bardin教授自ら気管支鏡を操作し採取法を詳しくレクチャーしてくださりました。ウイルス感染させたヒト気道上皮・トランスジェニックマウスの自然免疫応答の解析がこちらでの主な研究です。おおまかな実験内容は2週間に1回のミーティングで話し合いますが、比較的自由に実験できる環境のため充実した日々を過ごしています。国外留学したからといって特別な機器が扱えるわけでもなく、日本でも立派な研究ができるかもしれません。しかし言語が異なる国外で自分の居場所を新たに確立すること、コネクションを得ること、国外と日本の違いを肌で感じること等、留学しなければ得られないことがあります。
夫の留学先決定後に自分の研究室探しを開始し、小さな子供がおりフルタイムでは働けない自分を必要としてくれる研究室があるのか、子供たちの環境も大きく変わる中研究を続け成果を残すことができるのかと留学前に不安はつきませんでした。実際にメルボルンで仕事を開始してみると、それは杞憂でした。上司のPhilはとてもフランクで理解があり、私達家族の仕事・学校生活のことや、メルボルンでの生活を楽しんでいるかい?といつも気にかけてくれます。研究室には同年代の子供を持つ同僚がいるため、保育園や小学校夏休み中の子供の預け先などオージーワーキングマザー情報を教えてもらったり、またそのような時には協力して実験を行っています。所属センターのResearch/Postdoctoral fellowの大半は女性で、出産後もフレキシブルに生き生きと働いているようにみえます。
最後にメルボルンについてですが、移民都市であり多文化を寛容するおおらかさがあります。各国のおいしい料理も楽しめますよ。夫は臨床医ですが年5週間の有給休暇やオンコール以外の土日は完全にフリーであるため、長期の家族旅行を楽しんでいます。旅行先で野生のワラビー、ウォンバットやタスマニアデビルにも遭遇しました。留学に興味のある方は是非トライしてみて欲しいと思います。
~留学をおえて~
2017年3月に帰国しました。帰国後は呼吸器科肺生理研究室に所属し、留学で習得した技術・解析法を用いて基礎研究を続けています。またPhilが編集長を務める医学雑誌Respirologyの副編集長を拝任し、今度は呼吸器科医として一緒に仕事をしています。留学は家族にとってかけがえのない経験であり、次のキャリアへの礎となりました。現在、免疫・アレルギーに関わる7学会・UJA(日本人海外研究者ネットワーク)と協働し、若手研究者へ留学をすすめる活動をしています。呼吸器科に興味をお持ちの皆さん、臨床も研究も九州大学病院呼吸器科で一緒に頑張ってみませんか? 医局員一同お待ちしています。
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