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肺生理研究室

研究活動

COPD・喘息の諸病態に対する新規治療法をめざす基礎的探索研究

閉塞性肺疾患の領域では喘息とCOPDの合併病態であるasthma-COPD overlap syndrome(ACOS)が問題となっています。わたくしたちの研究室では2013年に高用量吸入ステロイドと長時間作用型β2作動薬の併用によっても十分にコントロールされていない患者に対する長時間作用型抗コリン薬(チオトロピウム)の追加効果を検討する小規模臨床試験の成果を発表しました。チオトロピウム追加は喘息コントロール状況の改善と肺機能上の改善をもたらしましたが、その改善効果は肺気腫を合併している所謂ACOS群でより顕著でした。このことからACOS固有の気流閉塞病態の存在が推測されます。その病態解明の糸口としてSP-D欠損マウスを用いたACOSモデルの研究を続けており、その成果が実りつつあります。
気道や肺胞の恒常性の維持には上皮層の統合性が重要な役割を果たしており、その障害はCOPDや喘息の諸病態に関与しているものと考えられます。繊毛上皮に分化誘導した培養気道上皮を用いてタバコ煙抽出液による気道上皮バリア機能の実験系を確立し、刺激によるバリア機能の低下に対する各種薬剤の効果を検討しています。今後はマウスを用いたin vivoでのバリア機能実験系の作成もすすめていく予定です。
腫瘍領域では数年来、免疫チェックポイント分子阻害薬が大きな関心を集めています。標的となる分子の代表格はPD-1/PD-L1の両分子ですが、これらの分子は気道のウィルス感染にも関与しています。気道ウィルス感染はCOPDや喘息の増悪因子であり、わたくしたちは10数年来、気道上皮のPD-L1発現機序について研究を続けてきました。研究の目標は低分子PD-L1発現阻害薬シーズの同定・開発です。ウィルスによるPD-L1発現誘導は気道上皮以外の肺構成細胞や炎症細胞にもみられ、その役割は細胞ごとによって異なっている可能性があります。PD-L1発現阻害薬の探索においてはこれら各種細胞ごとの効果を検証することが必要であり、マウスin vivoモデルの確立をすすめています。

COPDを中心とする地域住民を対象とした疫学研究と早期診断ツールの作成

久山研究も今年で10年目となり、研究室メンバーと元研究室在籍者の先生方のご協力により健診を通じた疫学データの集積を進めています。COPDや喘息、ACOSの有病率を合わせると12%におよびますが、多くの住民は健診を受けて初めて診断されており、早期診断ツールの作成と普及がもとめられています。すでに、鹿児島大学呼吸器内科の井上博雅教授との共同研究でCOPD-PSという質問票の有用性を確定しています。現在、より日本の実情に適合したCOPD-Qという質問票の開発を受けて進めており、まもなく論文発表できるものと考えています。今後は10年にわたる縦断的データを駆使したCOPDおよび関連疾患の自然歴や病態に関する研究の成果を着実に報告していく予定です。

おわりに

Physician Scientistの育成が肺生理研究室の使命です。そのためには基礎研究、臨床研究、疫学研究の3要素がバランスよく推進できる環境がのぞましいと考えます。実現は決して容易ではありませんが、積極果敢にチャレンジしてまいります。皆さまのご支援ご鞭撻を今後とも宜しくお願い申し上げます。