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肺生理研究室

研究活動

COPD・喘息の諸病態に対する新規治療法をめざす基礎的探索研究

閉塞性肺疾患の領域では喘息とCOPDの合併病態であるasthma-COPD overlap(ACO)が問題となっています。ACO固有の気流閉塞病態を解明する糸口としてSP-D欠損マウスを用いたACOモデルの研究を続けてきました。そのモデルにおける気道過敏性の亢進には、肺気腫性病変による肺コンプライアンスの増大と喘息性気道炎症による気道抵抗の上昇が複合して寄与している可能性を見出しました。研究成果は米国と英国の生理学会が協同で創立したJournalであるPhysiological Reportsに掲載されました。
気道や肺胞の恒常性の維持には上皮層の統合性が重要な役割を果たしており、その障害はCOPDや喘息の諸病態に関与しているものと考えられます。線毛上皮に分化誘導した培養気道上皮を用いてタバコ煙抽出液や線香煙抽出液による気道上皮バリア機能の障害を検討しています。これら刺激によるバリア機能の低下に対するステロイドの保護作用に差があることがわかりました。ステロイドに替わる低分子化合物のスクリーニングをすすめ、バリア保護機能を有する創薬につなげていきたいと考えています。
数年来、免疫チェックポイント分子が腫瘍免疫の阻害機序として関心を集めています。標的となる分子の代表格はPD-1/PD-L1の両分子ですが、これらの分子は気道のウィルス感染にも関与しています。気道ウィルス感染はCOPDや喘息の増悪因子であり、気道上皮のPD-L1発現機序について研究を続けています。研究の主目標は低分子PD-L1発現阻害薬シーズの同定・開発です。ウィルス関連分子である2本鎖RNAの経気道投与によるPD-L1発現誘導マウスモデルを確立した論文がJ Inflammationに掲載されました。PD-L1発現阻害薬の探索においては更に細胞ごとの効果を検証することが必要であり、より詳細なマウスin vivoモデルの確立に取り組んでいます。これらin vitro, in vivoのモデルを基盤にドラッグリポジショニングあるいは製薬企業パイプラインへの連携に持ち込みたいと考えています。また、2本鎖RNA刺激による気道上皮PD-L1発現に対してIL-22が抑制作用を示すことを見出しました。この抑制作用はSTAT3活性化を介することがわかり、腫瘍細胞におけるSTAT3依存性のPD-L1誘導とは異なる機序の存在が示唆され、Biochem Biophys Res Communに論文が掲載されました。

COPDを中心とする地域住民を対象とした疫学研究と一次予防の推進

久山研究は今年で10年目を迎えました。今年は5年に1度の一斉健診にあたり受診者も多いのですが、研究室メンバーと元研究室在籍者の先生方のご協力により無事健診を済ませることができました。協力してくださった皆様に深く感謝いたします。数年前からAMEDの支援を受けてCOPD早期診断(二次予防)ツール作成を鹿児島大学呼吸器内科の井上博雅教授との共同研究で進めてまいりました。このたび、日本の実情に適合したCOPD-Qという質問票を論文公表(Int J COPD)し、胸部疾患研究施設および鹿児島大学呼吸器内科のホームページで自由にダウンロードできるようにしました。これによってCOPDの二次予防の推進に努めていきたいと考えます。また、併存症については気流閉塞と動脈硬化病変の関連性についての論文がCirculation Jに掲載されました。次なる目標は一次予防です。喫煙がCOPDの最大のリスク因子であることはよく知られていますが、COPD患者の2割弱は非喫煙者であり、喫煙以外のリスク因子が注目されています。久山研究では呼吸機能に対する受動喫煙の影響に関する調査研究を進めており、今年からは末梢血好酸球数の測定も開始しました。歯周病などの口腔衛生の関与も検討しており、数年以内にリスク因子を同定したいと考えています。

おわりに

肺生理研究室はPhysician Scientistの育成が理念です。皆さまのご支援ご鞭撻を今後とも宜しくお願い申し上げます。