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肺生理研究室

研究活動

COPD・喘息の諸病態に対する新規治療法をめざす基礎的探索研究

気道や肺胞の恒常性の維持には上皮層の統合性がバリアとしての重要な役割を果たしており、その障害はCOPDや喘息、呼吸器感染などの諸病態に関与しています。数年前に気道上皮バリア機能の研究がスタートしました。線毛上皮に分化誘導したヒト培養気道上皮をタバコ煙抽出液で刺激すると電気抵抗TEERで評価されるバリア機能が低下し、多くのタイトジャンクション蛋白群の発現低下が生じます。ステロイドは限局的な保護作用しか示さず、LABAの併用効果もみられないのですが、抗菌ペプチドの一つであるLL-37は明らかな保護作用を有することを見出しました。また、線香煙抽出液による刺激によるバリア機能の低下について、ヒト培養気道上皮を用いたin vitroの実験系とマウスを用いたin vivoの実験系に取り組んでおり、さらにclaudin-3欠損マウスにおけるアレルギー性喘息モデルでのバリア機能実験系も進めているところです。
腫瘍免疫の標的となる免疫チェックポイント分子の代表格はPD-1/PD-L1の両分子ですが、これらの分子は気道のウイルス感染にも関与しています。気道ウィルス感染はCOPDや喘息の増悪因子であり、気道上皮のPD-L1発現機序について研究を続けています。目標は低分子PD-L1発現阻害薬シーズの同定・開発です。2010年頃から培養気道上皮のスクリーニング実験系による努力を続け、候補になる酵素阻害剤を1つ見出しました。その前臨床in vivoモデルでの検証として、2本鎖RNAであるpoly ICをマウスに気管内投与する実験系に取り組んできました。2本鎖RNA刺激によって上皮細胞系、好中球系、マクロファージ系、リンパ球系でPD-L1の発現が増強し、酵素阻害薬の投与は上皮細胞系と好中球系におけるPD-L1の発現増強を有意に抑制し、炎症性サイトカインやケモカインの産生を抑制することも明らかにしました。また、気管支内視鏡で採取した気道上皮の初代培養系を用いて、ヒトメタニューモウィルスの感染機序の解明に取り組んでいます。昨年からは福岡東医療センター、福岡病院、大牟田病院の国立病院機構3施設と福岡大学呼吸器内科学講座との共同でCOPD、喘息の増悪におけるウイルス感染の関与を検討する前向き臨床研究(SAVER研究)を開始しています。近年、難治性喘息に対する治療薬として抗サイトカイン抗体製剤が続々と登場していますが、その使い分けについては未だ確立していません。そこで、各抗体製剤使用例に関する前向き臨床研究をおこなっています。

COPDを中心とする地域住民を対象とした疫学研究と一次予防の推進

久山研究は今年で12年目を迎えました。今年も例年通り6月からアンケート調査とスパイロメトリーによる健診を実施し、9月中旬までに無事健診を済ませることができました。また、1967年に久山研究室で独自に実施されたスパイロメトリーのデータを掘り起こし、2012年のデータと比較することによって、喫煙が気流制限に与える影響がオッズ比で1.63から2.26に上昇していることを示し、COPDの最大のリスク因子としての喫煙の重要性を我が国のコホートで明らかにしました。一方、COPD患者の2割弱は非喫煙者であり、喫煙以外のリスク因子も注目されています。最近、九州大学歯学研究院口腔予防医学分野の久山研究グループとの共同研究で、歯周病が重症であると一秒量の急速低下をきたすリスクが高いことを示す論文を発表しました。さらに、5年間の追跡研究で重症の歯周病が喫煙とは独立したCOPD発症のリスク因子であることを明らかにしました。現在、口腔マイクロバイオームについての共同研究も推進中であり、『肺の健康は口の健康から』というメッセージを積極的に世間に伝えて生きたいと考えています。

おわりに

肺生理研究室はPhysician Scientistの育成が理念です。皆さまのご支援ご鞭撻を今後とも宜しくお願い申し上げます。